秋葉原にオタク文化を根付かせた功労者28年の歴史に幕を下ろした「コミックとらのあな」は攻めの撤退か!?
秋葉原をオタクの街として有名にした「コミックとらのあな秋葉原店」が、2022年8月31日に閉店した。2000年代のオタク文化を盛り上げてきたコミックとらのあなの閉店ということで、秋葉原には閉店を惜しむ多くのファンが押し寄せた。今回は、閉店の様子と今後のとらのあなの戦略について紹介しよう。
最終日のとらのあなはスタッフによる店内飾り付けに感動!
とらのあなは、1994年から秋葉原で営業している同人誌や商業誌を取り扱っているオタク向け専門書店。いち早く同人誌の委託販売を行い、即売会以外でも同人誌が買えるということで話題になったが、2022年8月31日でついに28年の歴史に幕を下ろした。そこでまずは、「とらのあな秋葉原店」の閉店の様子をレポートしよう。
とらのあな秋葉原店に到着すると、まず目に飛び込んできたのが「また、いつの日か“秋葉原”で会いましょう!」の看板だ。もちろんこれはスタッフのお手製。昨日まではなかったので本日だけの特別な飾り付けということだろう。
店内は閉店間近ということで商品のラインナップも少なく、一部の棚が撤去されている。しかし、人気作品や最新作、雑誌系はまだまだ置かれていて、大勢の客が最後の買い物を楽しんでいた。
C100終了後のということもあり同人誌を取り扱う4~6Fフロアがもっとも活気があった。このフロアはとくに棚の撤去などは見受けられず、思い思いの別れを楽しんでいるようだ。
また、店内の様子も通常とは異なり、いたるところにスタッフお手製の飾り付けが行われていた。イラストの掲示や感謝のポスター、閉店記念企画などがあり、多くの客がスマホで撮影している姿が見られた。
閉店時には歩道を埋め尽くすほどの人だかりが!
閉店時間の20時には歩道が埋め尽くされるほど人が集まっていた。これだけ多くの人に愛されたのは、とらのあなが秋葉原という街をオタクの街へ変化させた影響が大きかったのだと再認識させられる。閉店時には店長の挨拶もあり、多くの人が感慨深げにしていたのが印象的だ。
店長の挨拶が終わった直後には、ファンからの拍手や「ありがとう」などの歓声が上がり、ついに28年の営業に幕をおろした。
これからのとらのあなの戦略とは? 攻めの撤退でこれからの急成長を期待!
さて、惜しまれつつ秋葉原の店舗営業が終了したとらのあなだが、とらのあなの今後はどうなるのだろうか? 最近のとらのあなの経営状況を確認してみよう。
2019年~2022年はコロナ禍の影響で多くのサービス業が大きく収益を落としている。しかし、そんななかでも、とらのあなは通販に注力することで大きく利益を伸ばしていたのだ。コロナ禍によって同人誌即売会が相次いで中止・延期を余儀なくされ、その受け皿としてとらのあなの通販が大きく伸びたのだろう。
また、Webサービスとして急成長したのが「Fantia(ファンティア)」である。これは、特定のクリエイターをサブスク的に直接支援できるサービスで、多くのクリエイターとファンをつなげる役割がある。近年、クリエイターとファンの登録数は激増しており、利益を伸ばしているのだ。
とらのあなは、今後の事業計画についても公開しており、店舗の閉店は通販やネットサービスへ注力するための攻めの戦略だと思われる。とくに注目度の高いFantiaは、2025年までに212億円の売上を想定しているとのことだ。
事業構造転換の取り組みと実績→ここ
いかがだろうか? とらのあな秋葉原店の閉店のニュースだけを見ていると、経営が苦しくて実店舗を撤退したと考える人も少なくないだろうが、実は通販やFantiaに注力するために攻めの撤退だったということが分かるはずだ。
また近々とらのあなグループから新しいギャラリースペースの設置が決まっているという情報をゲットした。場所は秋葉原の「ガシャポン会館」6階。クリエイターの新しい発表の場としてグループ会社である「ツクルノモリ」プロデュースによるギャラリースペースになるようだ。詳細は後日公開されるとのことで、今後もとらのあなの活躍にも期待したい。
ギャラリースペースの詳細は近日公開→ここ
(文=西澤浩一)
イメージ写真は筆者撮影